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数値限定発明;判例検討(2)

2012.10.11

>判例検討(1)からのつづき。[文責 弁理士/技術士 葛谷(くずや)]

1-2.実際上の留意点
 筆者自身研究者であったので、経験からして、先に発明した者が、「際立って優れた効果を発揮する範囲」を見逃して、そこから外れた範囲のみを特許出願することは、非常に複雑な系等、特殊な場合を除いてほとんど無いに等しいと思われます。異質な効果については、多少可能性はあるものの、いわゆる「改良発明」では、その改良品のみが異質な効果を持つ可能性は低く、また、「今までに無い独創的な発明」についても、その物性や用途をいろいろ検討することは研究者の常でありますので、やはり先発明者が見逃した効果を捉えるという例は少ないものと思われます。先発明者が個人ならばあり得ますが、通常は「研究者集団」でありますので、発明品の用途展開についても、先に発明に到達した集団が圧倒的に有利といえます。

 では、審査基準の記載が実際上問題となるのは、どのような場合でしょうか。

 それは、先発明者の出願特許において、実際にはほとんど検討していないことを、「あれもこれも、とにかく考えられる可能性をできるだけ明細書に記載」しておいたことが、数値範囲以外の部分で自分の発明と重なってしまったというケースではないかと思います。

 このような場合、先発明者の出願特許には、自分の発明の数値範囲に関する詳細なデータは記載されていないことがほとんどです。したがって、自身の特許で「その数値範囲がなぜよいのかの説明」が不十分であると、「際だって優れた効果や異質な効果」の証明が困難となります。逆に言えば、際だって優れた効果や異質な効果は、自分で(自分の出願特許で)証明しておけばよいということになります。つまり、自分で主張した範囲にしっかり杭を打っておけば、先発明者の出願特許は恐れるに足りないということです。 

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