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数値限定発明についてTweets(3)
2012.05.15
>Tweets(2)からのつづき。[文責 弁理士/技術士 葛谷(くずや)]
2.数値限定の目的と数値限定発明の進歩性判断の関係
2-1.数値限定の目的
特許出願時における数値限定の目的、さらには出願人の公知技術に対する認識状況を、場合分けすると次のようになる。
(1)本願出願時に、数値範囲以外の部分はほぼ同じ公知技術の存在を認識している場合
(a)公知技術が訴求している効果と同質の効果であるが、ある数値範囲に、公知技術より有利な効果を見いだして出願。このとき、公知技術には数値範囲についての記載が無い(数値限定していない)か、あるいは、本願の数値範囲を包含する(または重複する)記載がある。ただし、本願ほどの有利な効果については記載されていない。
(b)数値限定の目的は(a)と同じであるが、公知技術に記載されている数値範囲とは異なりかつ重複しない範囲を見いだして出願。
(c)公知技術が何ら記載していない効果(異質な効果)を見いだして出願。このとき、公知技術には数値範囲についての記載が無い、もしくは本願の数値範囲を包含する(または重複する)記載がある、または本願とは異なりかつ重複しない範囲の記載がある。ただし、本願の訴求する効果について、公知技術は全く気付いていない。
(2)本願出願時に、本願の特許化に障害となる公知技術を認識していない場合(出願人は、類似の公知技術は無いと認識)
(d)公知技術との関係を意識したのではなく、次のような理由に基づいて数値限定して出願。
<数値限定の理由例>
・要求品質満足性:その数値範囲でなければ求める効果(性能)が得られない。
・実施可能性:組成物の特許等で、その数値範囲でなければ組成物が得られない。
・相反性:複数の要求品質があり、トレードオフ等の関係のため、全ての要求品質を満足させる数値範囲が限定される。
・その他:当該数値範囲しか実験していない。当該数値範囲以外は経済的に成り立たない。etc.
なお、蛇足であるが、これらは「正直ベース」の出願であり、特許請求の範囲および明細書の記載としては「巧くない」とされてきたものである。しかし、後述するが、正直ベースの部分の記載が「少なくともここは特許化したい」というコア部分を確保する上において大きな武器となるので、当該部分の詳細記載は非常に大切である。・・・・つづく
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