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数値限定発明についてTweets(1)
2012.04.24
>数値限定発明:とかく他分野では「能がない」と言われますが、化学分野にとってはたいへん重要です。少し記載を間違えると泣きを見ることになりかねません。化学の人間にとってはこの大切な”数値限定発明”について、私見を交えながら、数回に分けて解説していきたいと思います。[文責 弁理士/技術士 葛谷(くずや)]
1.数値限定発明とは-Part1-(1)
1-1.数値限定発明の定義
「数値限定発明」には、特許法第2条に定義されている「発明」のように、統一的に認識された定義は無いように思われる。したがって、数値限定発明については多くの論説が発表されているが、論者によってその定義の仕方(数値限定発明の捉え方)が異なり、定義の仕方が異なるがゆえに、論旨や見解に差異が認められる場合がある。
例えば、「数値限定発明とは、通常、公知発明に数値を限定して構成した発明のことをいう」と定義するもの、すなわち、公知発明(公知技術)との関係を含めて定義する仕方がある(以後、公知技術に統一する)。このように捉えるがゆえに、「規定された数値範囲が、公知技術に規定された数値範囲と重複しないものは、数値限定発明ではなくて数値変更発明である」との見解もある。さらには、「数値限定発明とは、公知技術と数値以外の発明の構成が同じであるのはもとより、課題や効果までもが同質で、数値範囲のみが異なる(というより数値範囲が縮小限定される)発明である」のように極端に狭く解釈する考え方もある。
一方、審査基準では、明確に「数値限定発明とは」として定義されてはいないが、「発明を特定するための事項を、数値範囲により数量的に表現した」ものを、数値限定の発明(数値限定発明)と捉えている。すなわち、公知技術との関係を特に含めないで捉える捉え方である。
特許出願時において、公知技術を明確に認識し、それとの差異を訴求するために数値限定して出願する場合もあるが、出願時には本願の特許性に影響する公知技術の存在を認識しておらず、公知技術とは関係無い別の理由で数値を限定して出願する場合も多々ある。したがって、前者の公知技術との関係を含めた定義の場合、出願時に「数値限定発明」と明確に認識している場合と、審査により公知技術が見つかり、結果論的に「数値限定発明」となる場合とがあり、出願人または発明者が「数値限定発明」を整理して理解する上で混乱を生じるものと思われる。
そこで、本稿では、審査基準の捉え方に則り、公知技術との関係を含めることなく「数値限定発明とは、発明を特定するための事項を、数値範囲により数量的に表現した発明のことをいう」と定義して論を進めたい。すなわち、数値限定の目的が何であれ、特許請求の範囲に記載された発明に数値限定のあるものを「数値限定発明」として定義し、それを特許性判断の観点で分類・整理していきたい。なお、論旨の的を絞るため、ここでの「特許性判断」は、「進歩性有無の判断」に限定する。すなわち新規性は有しているものとする(新規性・進歩性以外の特許要件も満足しているものとする)。 ・・・・つづく
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